転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


444 いつも食べてるご飯と違うからびっくりするよね



 お酒やおつまみをみんなで食べてると、給仕のお姉さんがやっとご飯の準備ができたよって言ってきたんだ。

「すぐにでもお出しできますが、どうなさいますか?」

「うむ。あまり酒を飲みすぎる訳にもいかぬからんぉ。それにルディーン君も果実水ばかりの増しておく訳にも行くまい。出せるというのであれば出してもらおう」

 さっきニコラさんたちも、あんまりおつまみばっかり食べてたらご飯が食べられなくなっちゃうって言ってたでしょ?

 それに僕も果実水ばっかり飲んでたら、それだけでご飯食べられなくなっちゃいそうだもん。

 と言う訳で、持ってきてもらう事になったんだけど……。

「えっと、これが食事ですか?」

 給仕のお姉さんが持ってきたお皿を見て、ニコラさんが頭をこてんって倒したんだよね。

「それに、このフォークとナイフの量。落とした時の予備にしては多すぎないですか?」

 それにね、ユリアナさんも、お皿の横に並んでるフォークやナイフを見てやっぱり頭をこてんって倒してるし、

「後、このきれいな布はなんにつかうのかなぁ?」

 アマリアさんなんてナプキンを持ち上げたりひっくり返したりして見てたりするんだもん。

 僕、それがおかしくってけらけら笑っちゃったんだ。

「ナプキンは本来、最初に飲み物を持ってきた時に出すべきなのだから、よく知らぬものはこのタイミングで持ってこられても使い方が解らぬかもしれぬな」

 でもね、お爺さん司祭様はアマリアさんに、それはナプキンって物で二つに折って膝の上にのっけるんだよって教えてあげたんだ。

「へぇ。そうなんですか。変な事、するんですね」

「客によっては上等なものを着てくるものもおるからのぉ。ついうっかり落としてズボンやスカートを汚さぬために敷くのだ」

 その他にもね、お口が汚れた時は、二つに折った上の方の内側で拭けばいいんだよって教えてもらったもんだから、アマリアさんはびっくり。

「流石、高い宿に泊まる人たち。私たちみたいに手で拭くんじゃないんですね」

「……手で拭いたら、今度はその手を拭かねばならなくなるであろう」

 こんな風に言ったもんだから、今度はお爺さん司祭様がびっくりしたお顔になっちゃった。

「まぁ、よい。それとニコラと言ったか。この皿はオードブルと言ってな、これで終わりではなく後からメインとなる皿が出てくるから安心せい」

「そうなんですか。びっくりしたぁ」

 お爺さん司祭様の言った通り、僕たちの前にあるお皿はオードブルだから、お料理がちょこっとしかのってないんだよね。

 だからそれを見たニコラさんは、これで終わりなの? ってびっくりしたみたいなんだ。

 それとね、この時お爺さん司祭様が教えてくれたんだけど、ここが高いお料理屋さんだったらこの前に一口で食べられるものがのってるアミューズってのが出るんだって。

「それが最初に出て来ておったら、もっと驚いていたであろうな」

「ええ。そんなのが出てきたら、晩ご飯なのにさっきまでのおつまみよりも量が少ないって思ってたでしょうね」

 こんなお話をしながら、にっこりと笑うニコラさんとお爺さん司祭様。

 そして最後に、お爺さん司祭様はユリアナさんにも何でフォークとナイフがこんなに並んでるのかを教えてくれたんだ。

「冒険者が使う宿や料理屋で見る事が無いであろうから驚くのも無理はない。こういう所では一皿につき一対ずつ、別のカトラリーを使うのだ」

「かとらりー?」

「フォークとかナイフ、それにスプーンの事だよ。こないだお母さんがそう言って教えてくれたんだ」

 お父さんと二人だけで来た時は、僕も知らなかったから一個ずつしか使わなかったんだよね。

 でもこないだ家族みんなで来た時に、お母さんがこれの事はカトラリーって言って出てくるお料理ごとに一個ずつ、外っ側のから使って食べるんだよって教えてくれたんだ。

「ほう、ルディーン君は知っておったか。まだ幼いのに、偉いのぉ」

「えへへっ」

 お爺さん司祭様に褒められて、僕、とっても嬉しかったんだよ。

 だからニコニコしてたんだけど、ニコラさんたちの方を見たらそんな気持ち、どっか行っちゃったんだ。

 だって3人とも、何でか知らないけどすっごく怖いお顔になってたんだもん。

「ニコラさん、どうしたの?」

「えっ、なんの事をいってるのかな? ルディーン君」

「だってみんな、すっごく怖いお顔、してるよ?」

 だから僕、なんで? って聞いたんだよね。

 そしたらニコラさんは慌ててニッコリ笑うと、その理由を教えてくれたんだ。

「さっき司祭様が、このフォークとナイフは一皿ずつ違うものを使うって言っていたでしょ? でもそんな事をするお店に行った事ないから、ここではもしかしたらフォークとナイフの使い方も違うのかも? って思ったのよ」

「それ、私も思った。だってここ、ナイフだけじゃなくフォークやスプーンも金属製だもん。もしかしたら今までの食べ方も、周りから見たらおかしかったんじゃないかって思って」

「もうすぐここ、他のお客さんでいっぱいになるんでしょ? それを見られたら笑われるんじゃないかって思ったらすごく怖くなっちゃったの……」

 そう言うと、ユリアナさんとアマリアさんはしょんぼりしちゃったんだよ。

 そしてそれにつられたのか、ニコラさんまで一緒になってしょんぼりしちゃったんだけど、

「何だ、そんなことを気にしておったのか。確かにテーブルマナーと言う点ではなっておらぬが、先ほどまでの行動を見るに、それほどおかしいと思うほどの事は無かったぞ」

 お爺さん司祭様が、そんなにおかしな食べ方してなかったよって。

 それにね、僕も別に変じゃなかったよって教えてあげたんだ。

「全然変じゃなかったよ。だってちゃんとフォークで食べてたもん」

「いや、流石にフォークで食べるのは普通だから」

「え〜、でもでも、こないだ来た時は、ディック兄ちゃんがテオドル兄ちゃんのお皿からお肉をナイフで刺してとっちゃったもんだから、お母さんにすっごく怒られたんだよ!」

 ディック兄ちゃん、今17歳でニコラさんとおんなじ歳でしょ?

 なのにそれより下のユリアナさんやアマリアさんもそんな事しなかったもん。

 だから僕、3人とも全然変じゃないよって言ったんだよ?

 でもね、ディック兄ちゃんがしたことを聞いたニコラさんたちはぶるぶる震えながら、そんなのできるはずないよって。

「いや、流石にこんなところでそんな事は……」

「ある意味、この食堂でそれができるのは凄いわね」

「ええ。そんな事、怖くてできないわ」

 ニコラさんたちからすると、ディック兄ちゃんがやったのはすっごい事だったみたい。

 でもそのお話を聞いておかげで、さっきまでの怖いって気持ちは無くなったんだって。

「そこまでの事をしても大丈夫なら、それほど気にしなくてもいいのかも?」

 そう言いながら出てきたスープやパン、それにお魚料理や肉料理だけじゃなくって、最後に出てきたデザートまで全部美味しいおいしいって食べちゃったんだ。


 きちんとしたコース料理、初めて食べる時は緊張しますよね。

 でもまぁ私の場合、まだ中学生の頃に東京の帝国ホテルのレストランで初めて食べたのですが、そこには給仕の人がマナーを教えてくれるコースがあったので間違えたらどうしようなんて心配は無かったんですけどね。

 それに対してお姉さんズの場合はマナーなんてものは存在さえ知らないような生活をしていたのに、いきなり高級ホテルのレストランに連れていかれたようなものですよね?

 そりゃあ、ガクブルするのも当たり前です。

 なのにそんな食堂で、兄弟とは言え他の人の皿の肉を、それもナイフで刺して強奪するディック兄ちゃん。

 間違いなく大物になりますねw


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